最初で最期の海外旅行(その③)バナナボート編
※前回からの続き
マクタン島のシュノーケリング会社に戻ってきた。
もう既にそうとう濃い1日なのだが、ここからまたひと山ある。
シュノーケリング会社の前に、小汚いが一応浜辺があった。
そこで今から、ツアーオプションの「バナナボート」をやると言う。
(そういえばそんなん申し込んでた。)
前回から言ってるように、強風で海は荒れている。
特にキャンセルするかを聞かれるでもなく、あれよあれよとバナナボートへ導かれた。
(この時の私の意思の無さを、このあと悔やむことになる。)
波が打ち付ける中、ライフジャケットを着て、バナナボートにまたがる。
先頭が夫、その後ろに私、私の後ろに若い男女4人が乗った。
ちなみに、最初私が先頭にいたのだが、「先頭は女性には怖いから」と、スタッフが私と夫を交代したのだ。だが実際は、夫は私以上に絶叫マシーン等に弱い。このことが、この後のことに影響する。
モーターボートに引かれ、バナナボートが動き出した。
どんどん浜辺から離れていく。
心もとないバナナボートの上で、
沖に出るほどに心細くなる。
もといた浜辺はとうに見えなくなり、
ある程度沖合にでたところで、ボートは停止した。
海原に浮かぶ私たちの足元には、
底の見えない暗い海が広がっていた。
空はどんよりと曇り、
風がごうごうと吹き、
波は高い。
すでに嫌な汗がでていた。
そしてついに、
モーターボートが猛スピードで走りだした!
早い。
早すぎる。
こんなのイカレている。
声もでない。
全身を打つ衝撃と風と水しぶきに、
振り落とされまいと必死に持ち手を握りしめる。
恐怖は更に加速する。
現地スタッフは、ニヤつきながら猛スピードでボートを揺らす運転を始める。
もともとの波の高さも助けとなり、
猛スピードを維持しつつ、バナナボートは常軌を逸した高さで飛んでは跳ねての躍動を繰り広げる。
字で表すとなかなか伝わらないが、
本気で「死ぬ」と思った。
背後から聞こえるのは歓声ではなく悲鳴だった。
私は息を止め、持ち手を握りしめ、全神経を集中させて上下運動の衝撃に耐えた。
そして私は、もうひとつ耐えねばならないことがあった。
夫が、私の手の上に乗っているのだ。
絶叫マシーンにも乗れない夫は、この圧倒的恐怖に、先頭で必死に耐えていた。が、完全に腰が引けていたのだ。
激しい上下運動とともに、夫の尻が私の手の甲を容赦なくえぐる。
どんなに痛くても、無論絶対に持ち手を離すわけにはいかない。
痛い。
怖い。
痛い。
地獄の無限ループを、私は必死に耐えるしかなかった。
そしてついに、地獄のバナナボートタイムが終わり、浜辺に戻ってきた。
とにかく手が痛い。
見ると、右手の甲が、激しい摩擦で皮膚が剥げて、火傷のような状態になっていた。そりゃ痛いわけだ。
夫を責めることも出来ないが、
ともかく痛い。
テンションだだ下がりである。
なお、この手の甲の傷は意外と深く、治るまで半年かかることになる。
今も傷跡が残っており、いつでも新婚旅行を思い出すことができる。
こうして、
心と身体に消えない傷を残し、
ホテルに戻った私たちは、何をする気力も無く、とにかくひたすら寝るのだった。
次回へ続く。
(初日だけで①〜③になってしまいました。帰国まであと4日あるんですが、語りつくせないので次回ダイジェストで一気に畳みます。笑)
[追加]
次回 その④↓
https://apiyama-apisuke.hatenadiary.com/entry/2018/05/30/104732